鍼灸のコト

『病は気から』…気の持ちようで痛みも変わる?プラセボ効果とノセボ効果について

変形性膝関節症の痛みに対するグルコサミンとコンドロイチンの効果

グルコサミンとコンドロイチンの効果にはエビデンス(科学的根拠)が認められないことはこれまでの多くの研究結果から明らかになっています。ただ、グルコサミンの痛みや膝機能の改善に対する効果は、いくつもの大規模な質の高い研究で相反する結果が見られます。効果が認められるものと認められないものが混在することから、効果のエビデンスが不明だと考えられています。コンドロイチンでも研究により結果が異なるものがありますが、大規模な研究結果から効果が認められないとされているのが現状です。

研究結果が異なっているのは、グルコサミンの容量の違いや研究方法の違いなどが原因と考えられていますが、痛みを抑える効果が認められたものもあるということは事実です。また、日本でも特定の会社の製品では効果があったとデータで示されているものもあります。今後、さらに長期間に及ぶ研究結果によってこれらの結果は変わる可能性も考えられます。詳しくはこちら

グルコサミン、コンドロイチンなどのサプリメントは摂らない方が良い?

では、エビデンスがないので摂らない方が良いのでしょうか?

安全性で言うと、どちらも3年間摂取し続けても重篤な副作用がないことがわかっています。また、グルコサミンの効果については、ある程度強い痛みの方には効果がある可能性が示されています。ですから飲み続けても体に毒にはならないし、もしかしたら効果があるかもしれないのです。ですが、かかりつけの医者に聞いても勧めてくれる人はおそらくゼロ、「まぁ、良いと思ったら飲んでみれば…」と言われるだけだと思います。結局、決めるのは患者さん自身と言うことになります。

私なら、科学的根拠=エビデンスという言葉に弱い方にはお勧めしませんが、そんなことを無視して自分には絶対効くと信じられる方にはお勧めします。

「西洋医学=絶対的信頼」「代替医療=気のせい」…考え方は変わっています。

プラセボ効果とノセボ効果

お勧めするのは、信じる力はそれだけ強く、そのような方には必ず結果が出ると考えるからです。プラセボ効果とノセボ効果というものがあります。プラセボ効果とは、薬効が認められない偽薬(例えば砂糖の塊)を飲んで症状が改善することを言います。グルコサミンの効果を確認する研究でも用いられており、薬の効果などを検証する際に使われます。薬の効果が偽薬の効果(プラセボ効果)を上回ることが統計学上証明されたら、その薬の効果にエビデンスがあるとされるわけです。一方でノセボ効果は、プラセボと同様薬効のない偽薬を飲んだにもかかわらず副作用が出現するというものです。偽薬を飲む人はそれが本当の薬だと思って飲んでいるので、いずれの効果も「気のせい」と考えられていたのですが、単に気持ちのせいで効果があるように、または副作用があるように感じているだけではなく、その人の体には効果や副作用を発現する生理学的な変化が見られることがわかってきています。つまり、プラセボ効果は良い薬だと思って飲むことが身体に良い変化を起こしており、ノセボ効果は薬が怖いと思って飲むことが身体に悪い変化を起こすということになるのです。

病は気から…が科学的に証明されています

これらのうちプラセボ効果をうまく使えれば、身体を良い状態に持っていくことが可能になります。特に痛みなどの主観的な症状の改善は重要なテーマと考えられています。また、神経変性疾患の一つであるパーキンソン病の震えなどの症状緩和にも効果が見られることがわかっています。ですが、プラセボ効果は痛みの伝達や運動神経の調節に関わる神経伝達物質など、身体がもともと持っているものだけに見られる変化で、例えば腕を無くした人に腕が生えてくることや膝の変形が進んで曲がってしまった膝を真っ直ぐに伸ばすことは起こらないということです。

信じる力、その「気」が身体の内面に変化をもたらしてくれるのです。

では、一方で鍼灸施術の効果はいかがなものでしょうか?ここまで読まれた方には、鍼灸の効果もプラセボではないのか…と考えられる方も少なくないと思いますが、徐々に鍼灸治療の効果の科学的な根拠を示す研究も増えてきています。また、現在は科学的根拠を示すと認められていない疾患でも、鍼灸治療の効果を信じる気持ちとは関連することなく臨床的な効果が現れている研究も多く存在します。

ただ、これまでお話ししたプラセボ効果を含めたものが、実際の鍼灸施術の効果だと考えていただくことが鍼灸の理解に役立つのではないかと私は考えています。例えば今の体の状態の説明の仕方、施術の際の声の掛け方や態度で、治療効果や痛みの程度を変化させてしまうことも少なくないからです。そこで不安感や不信感を与えてしまうのは施術者側の問題ではあるのですが、施術を受けようと考えているけど少し不安がある…というような方は、どちらの院でも鍼灸や施術の考え方についてお問合せいただくことをお勧めします。そうすることで、施術に対する安心感も増して治療効果にも格段の差が出ることも考えられるからです。

私も鍼灸臨床の現場でこれらの効果をうまく使いたいと考えて日々取り組んでいます。

長岡京 季 鍼灸院では、鍼灸の技術や考え方はもちろん、さまざまな側面での接し方が重要だと考え、十分に考慮して対応させていただいています。ぜひ体験してみてください。

また、プラセボに興味のある方はぜひこちらを。。。

「病は気から」を科学する 著:ジョー・マーチャント 訳:服部 由美 講談社

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