鍼灸のコト

鍼灸のトリセツ Vol.2… 鍼灸院の選び方

開院してから約1年4ヶ月の間に来院いただいた方のほぼ8割が鍼灸の受診が初めてという方でした。その方々のお話を伺って、鍼灸を受けてみたいと思っていても「どこに行ったらいいのかわからない…」「自分にあう鍼灸院の探し方がわからない…」という方が非常に多いということを知りました。当院を選択してくださり、継続して来院してくださっている方もあれば一度の来院で来られなくなった方もおられます。その中には鍼灸の良さを感じることができずに止められた方も少なからずおられるかもしれません。

そこで、最初に選んだ鍼灸院が間違っていたという不幸がないように、今回は私が思う鍼灸院の選び方、見つけ方について書いてみたいと思います。開業している立場からすると自分の院が外からどのようにみられているのか、もう一度初心に返って、翻って考える機会にできたらと思います。

  • はじめに

現在では、検索サイトに“鍼灸院”と地域を入力すると限りない件数が表示されますが、そこからの絞り込みが問題ですね。絞り込むために次の条件として“肩こり”や“腰痛”などと入力されることが多いと思います。2021年に行われた「鍼灸施術受療に関する調査研究」(公益法人東洋療法研修試験財団鍼灸等研究報告書)によると、鍼灸を受けてみようと考えた理由は71.8%の方が『肩こり・腰痛などの症状の軽減』でした。この言葉だけでは測れないのですが、この中には西洋医学ではどうにもならないと考えている方や、東洋医学に興味があって鍼灸で身体を良くしたいと思っている方も含まれています。“肩こり”や“腰痛”で検索したとしても、自分がどのような施術を受けたいのかによって院の選択も変わります。鍼灸を経験したことのない人にとっては、ホームページに書いてあることを読んでもよくわからないことばかり…どんなことをされるのかイメージできないことも多いのではないでしょうか。

そこで、自分自身が鍼灸院を探すときに気になる項目についてまとめてみることにします。ひとつひとつ自分の思う施術と重ね合わせていただけると検索で出て来た中から選んでいただくときの手助けになると思います。

最初に…国家資格を持っている。施術経験が豊富。この二つは前提として考えておきましょう。その上で下記の項目をご覧ください。

  • 専門性について

鍼灸師はどのような体の不調や疾患に対してもある程度の知識を有している「総合診療医」のような役割であると考えられます。もちろん全ての疾患や不調に対して鍼灸の効果があるわけではありませんので、鍼灸が役立てるか否かの判断も含めた知識を持つということです。そんな鍼灸師の中にも、高い専門性を持つ鍼灸師は存在します。例えば、「不妊治療」「泌尿器疾患」「女性のための鍼灸」「消化器の症状」などなど…。ご自分の今の悩みと鍼灸院が掲げている専門領域や得意とする症状が合致するのなら、その鍼灸院を候補に挙げておくと良いでしょう。

  • 施術内容(手技の方法などについて)

どのような考え方で鍼灸施術を行っているか…ということです。悩みを抱えている患者さんからするとどんな内容でも改善すればそれで良いということになるのですが、鍼灸を受けてみようというのであれば知っていただいた方が安心して受けていただけるものと思います。大きく分けて3つあります。

一つは西洋医学的な考え方に基づいた鍼灸施術です。鍼灸の効果については様々な研究が行われており、研究結果からエビデンス(科学的根拠)があると考えられる疾患や症候、臨床的に効果が認められる疾患や症候が多く存在します。このような研究結果や臨床的に効果の高いと考えられる施術方法を取り入れて症状の改善を図る施術方法です。

次に東洋医学的な考え方に基づいた鍼灸施術です。東洋医学の考え方の基礎になっているのが「陰陽論」「五行論」です。日本には東洋医学的な施術を行う多くの流派と言われるものが存在します。その中身は別として、東洋医学の基本理論を取り入れて身体を診ていく鍼灸施術です。

そして、最後が上記の2点を上手く融合させた鍼灸施術を行うところということになります。基本的には学校教育でも双方の良さを取り入れることを基本として鍼灸施術を組み立てるよう指導されています。しかし、実際にはいずれかに極端に偏って施術が行なわれていることも少なくありません。

ご自身が鍼灸に求めるものが何か…それがはっきりしている場合には個々の鍼灸院の考え方をご確認の上で選択されると良いと思います。

  • 外観(院の外観、院内の見た目と施術者の外見)

鍼灸院や整骨院には法律で広告できる内容が制限されています。効果・効能を謳っている場合や、金額の表示がされている看板を掲げている場合はこれらの広告の定めに反している可能性があります。これは信頼できる施術所か否かの判断の一つになるのではないでしょうか。また、院の外観や院内が清潔であること。施術者も清潔で信頼できる見た目であること。これらは安心して身体を任せることができるかどうかの大事な判断材料になります。施術者の見た目というと、白衣、ケーシなどのイメージでしょうか。最近ではスクラブという医療関係者向けのユニフォームの場合も多くなっていますが、これらは全て「医療従事者」を感じさせるものです。これによって、受け手側は医療という信頼できる施術を受けることができるという安心感が得られると思います。ですが、これはあくまで見かけのものです。施術者が白衣やそれに準ずるものを着ていなかったとしても、信頼性や清潔で安心できる施術が受けられることが重要なので、外見だけでなく内面もしっかりと見ることが大事です。他方、白衣や医療(注射・手術など)を感じさせる服装が苦手という方も少なくありませんので、あえて普段着での施術を選択している院も存在します。当院はリラックスして施術を受けていただくことを目的に後者を選択しています。

  • 最後に、「気が合う」かどうか…

これは自分の中では1番目の判断基準でも良いかもしれないと思うのですが…「気が合う」ということ。皆さんはいかがですか?人によって感じ方が違うかもしれないのですが、「なんでも話せそう」「安心できる」「頼りになるかも」「違和感ない」などなど。そんな感じがあるところが一番かもしれませんね。また、こちら側から言えば、施術者も同じように感じることがあります。ただ、たとえ気が合いそうにないと思っても、合わせる努力をするし合わせられるのが施術者だと思っているので、患者さん側から合いそうにない…と思われる時点で何か足りないのかもしれないですね。ということは、これは行ってみないとわからないことなので、結局これまで書いた内容をしっかり吟味して選んでいただくのが良いということになります。

いろいろと書きましたが、これらは全て私の目線で考えたことになります。それでもこれから鍼灸院を探して受けてみようと思われる方に少しでもお役に立つことができ、ミスマッチが少しでも無くなって、鍼灸に親しんでくださる方が1人でも増えることを願っています

長岡京 季 鍼灸院  代表:宮本 直

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