表記の内容で、研修会講師を務めて来ました。
明治東洋医学院専門学校。
わたしが鍼灸の資格を取得し、大学院を修了後に教員となり、現在も非常勤講師を務めさせていただいている母校です。初めて学校に足を運んでから今年で20年が経ちました。学校はほぼ100年の歴史があります。そんな母校での研修会講師…なんだか不思議な気分でした。
今回の研修会は、鍼灸学科の同窓会「明友会」主催の専門臨床研修会で、卒業生で臨床経験豊富な鍼灸師が対象です。今回のテーマは“膝”ということで、来られる先生の臨床に役立つ内容をお話しすることとしてテーマを決めました。
今回の依頼が来たのは、私が大学院で変形性膝関節症の痛みと運動機能について研究をして、現在も運動器を中心に臨床を行っていることからであると推測します。ですが、今は研究者ではなく臨床における鍼灸治療を中心としている立場としては、最近の研究結果などのデータを勉強し直すことから始める必要があり、この研修会のおかげで大きな学びの機会となりました。
テーマで取り上げた変形性膝関節症は中高年の女性に多い疾患です。思い当たるきっかけや原因がなく膝の痛みを訴えることが多く、じっとしていて動き始める時や階段の上り下り、膝を深く曲げる時などに痛みが強くなることが特徴の一つです。多くの研究のおかげで、最近は発症のきっかけとなるものや進行の危険因子、痛みの原因など多くのことがわかっています。
この変形性膝関節症に対する鍼灸治療の効果としては、痛みを和らげ、運動機能を向上させるということが私の研究でも確認できました。また、多くの研究から鍼灸治療が効果的であることはある程度確認されています。ただ、痛みの原因を知ることは重要で、一人一人の痛みの特徴を考え、適切な施術を選択することが大切になります。また、変形性膝関節症だからと膝ばかり見ていてはその方の痛みや本当に困っていることの原因を見誤り、解決に導けないことになりかねません。また、解剖学的にしっかりと膝の構造を理解し、安全な施術を心がける必要があります。そして、これらのことは鍼灸師は全て理解をして施術にあたっていると考えています。
しかし、残念なことに最近発行された「変形性膝関節症診療ガイドライン」(日本整形外科学会 監修)では、鍼治療・灸治療ともにあまり進められないという結果になっています。これは効果を立証する研究成果が十分ではないことと、ほんの一部の危険な施術が印象を悪くし委員会全員の評価に結びついたと感じましたが、改めて基本にかえってしっかりと施術に向かわなければと考えています。※リンクはガイドライン案となっています
そしてこの研修会では、上記の事柄を共通認識するとともに、変形性膝関節症の発症の要因となる膝の変化、膝の痛みの原因、膝痛と関連しやすい疾患、運動機能に影響する因子、それを解決するための鍼灸治療についてお話ししました。
ご参加いただいた方々が日常の臨床で遭遇する膝痛を診る際、少しでも役立てる内容であれば幸いです。
もちろん、当院は運動器の痛みや不調を診ることを得意としています。今回は膝痛について自分自身も勉強し直すことができ、レベルアップできたと自負しています。
変形性膝関節症だけでなく、膝に不調や痛みをお持ちの方は一度ご相談ください。
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