季の特徴として取り上げている「スキンストレッチ®︎」「Animal Flow®️」「裸足ランニング」ですが、皆さんにはどんなつながりがあるのかご理解いただきにくいと思いますし、なんだか変なことをやる鍼灸院だというように感じられるかもしれません。
でも、現在の鍼の施術も含めて、そこには全てがつながるキーワードがあります。
始まりは大学院で行った「変形性膝関節症に伴う痛みと運動機能に対する鍼治療の効果 -鍼の刺入深度の違いによる治療効果の検討-」という研究がきっかけでした。(論文はこちら)変形性膝関節症に対する鍼治療の効果を浅く刺入する鍼(3mm程度)と目標とする筋まで刺入する深い鍼とで比較したのですが、浅い鍼が痛みも運動機能も改善したというものです。この論文ではその効果の機序について詳細に考察することができませんでした。それから13年、今でも生体による基礎的な研究を行ったわけではありませんが、自分のなかで一つのキーワードに行き着いたのでした。それが「fascia」ファシア・膜(筋膜)です。ファシアとは、ネットワーク機能を有する『目視可能な線維構成体』と考えられており、これまでの考えのように筋肉を包む膜=筋膜だけではなく、腱膜や靱帯や腱も含んだものです。
季の特徴で取り上げているもののうち、「スキンストレッチ®︎」は筋膜、特に浅筋膜に直接アプローチできる、これまでの同様の器具とは全く違う考え方による最新のツールです。また「Animal Flow®️」の動きの効果の一つには、筋肉・筋膜の繋がりを表すアナトミートレインのそれぞれの経線に関連するものが含まれており、動きながら筋膜を整えることが可能なトレーニングと考えられています。筋膜に好影響を与えるには、ダンベルを一方向に動かすような運動ではなく、あらゆる方向で負荷がかかるトレーニング、例えばインディアンバトンやケトルベルを用いたトレーニングが有効とされており、Animal Flow®️の動きもその一つに含まれます。
そして裸足ランニングですが、これは自分の身体のバネを最大限に生かした走り方を身につける一つの方法です。そのバネが腱であり、腱という弾性エネルギーを持つ組織を使ったトレーニングであると言えます。そのことが怪我の少ない走り方を身につけることに役立っているのかもしれませんが、それは一面でしかなく、裸足ランニングには自然な人間本来の体の使い方を身につける多くの効果があると思っています。
最後に、季の鍼の施術の一部にもこの「fascia」が関連しています。
東洋医学ではよく「気・血の巡り」という言葉を用いることがあります。基本的にそれらの通り道は経脈と考えられているのですが、具体的に体のどの部分を巡っているのかを明確に示したものは見当たりませんでした。しかし、閃く経絡(著:ダニエル・キーオン、監訳:須田万勢・津田篤太郎、訳:建部陽嗣)で示されたのが、「気・血」の通り道は「fascia」!!でした。そして先述した筋肉・筋膜の繋がりを表すアナトミートレインのそれぞれの経線のほとんどは、ツボの連なりである経脈の走行と近いところに存在しているのです。これらことは、筋・筋膜性の痛みに鍼灸が有効であること、浅い鍼が効果的であること、痛みのある部位と全く離れたところに鍼を打つことで痛みや強張り、動かしにくさが軽減することなどなど…多くのことをスッと腑に落としてくれるものです。
季ではこのように「fascia」「気・血の巡り」を診ることを基本として、さらに西洋医学的、東洋医学的身体所見を組み合わせて身体の状態を把握し、一人一人に合わせたはり・きゅうの施術を組み立てています。
このことが、西洋医学と東洋医学を組み合わせた独自の鍼灸施術のひとつなのです。
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